朱喜哲さん×三宅香帆さんスペシャルトーク(6)匿名性と書店の未来 3
三宅 香帆さん(以下三宅):確かに。お店もそうですよね。ひとつのお店に全部求めるのではなくて、このお店はこういう役割で、家族と行くならあのお店、ひとりで行くならこのお店、というように。役割によって違うじゃないですか。
行きやすいお店とか、古書店と新刊書店とか、別のいい場所があったりとか。
朱 喜哲さん(以下朱):なるほど。八戸ブックセンターにも地元のクラフトビールや、オレンジワインが飲めたり、イートインもあるんですけど、ここだけにそこまで多くの機能を詰め込みすぎてないですよね。
これもまた別の行政施策だと思いますが、「みろく横丁」という屋台村がこのすぐ近くにあるんですよ。
僕の昨日の夜の街でのヒアリングに基づけば(笑)、みろく横丁は八戸ブックセンターの動きと同じような時期に作られたらしいのですが、まさにこのあたりから旧飲み屋街の間をつなぐ場所に設置されていて、そこにポップアップ的な飲食店とか若い方のやっているお店が立ち並んでいる。その街づくりの構想も、すごくいいなと思って。
ブックセンターで買い物も飲食もできる、何でもここで済みますよ、じゃなくて、街をうまく人に拓いてあげたり、それも従来の酒場街に向けての導線をつくっていったりするというのは、民業を圧迫するのではなく「公助」としてできる、とてもよい施策かもしれないと思ったんですよね。
三宅:わかります。全部入れすぎると、逆に行きづらいものになる場所ってありますよね。書店もあるけど、お店屋さんもいっぱいあって、お土産屋さんもあって、そしていろいろな施設もいっぱいある。全てがあり過ぎると逆に、行きづらいという。
朱:地方のイオンモール問題という話と関連しているので、そこしかないんだけれども、そこがオールインワンすぎて、何かみんなそれをあまり美的にいいとは思わなくなっちゃう、というような。
三宅:イオンはパッケージとして完成されているからまだしも、行政が真似して作ると何か違うみたいになっちゃう問題、すごくある気がしています。
持ち過ぎず拓くとか、別の回路をつくるぐらいの感じでやっていく、みたいなことが実は大事なのかもしれませんね。
朱:そういう塩梅とかも含めて、いろんなことをもっと言語化してみてもいいかもしれないですね。八戸で生活をされていらっしゃる方たちや、この面白さを味わっている皆さんの味わい方を可視化できたらいいのかなと思います。
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◆プロフィール 朱 喜哲(ちゅ・ひちょる) 哲学者。1985年大阪府生まれ。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。大阪大学社会技術共創研究センター招へい准教授ほか。専門はプラグマティズム言語哲学とその思想史。著書に『人類の会話のための哲学』(よはく舎)、『〈公正(フェアネス)〉を乗りこなす』(太郎次郎社エディタス)、『バザールとクラブ』(よはく舎)、『100分de名著 ローティ『偶然性・アイロニー・連帯』』(NHK出版)。共著に『ネガティヴ・ケイパビリティで生きる』(さくら舎)、『世界最先端の研究が教える すごい哲学』『在野研究ビギナーズ』、『信頼を考える』(勁草書房)など。共訳に『プラグマティズムはどこから来て、どこへ行くのか』(ブランダム著、勁草書房)などがある。 三宅 香帆(みやけ・かほ) 文芸評論家。1994年高知県生まれ。京都大学人間・環境学研究科博士前期課程修了。京都市立芸術大学非常勤講師。天狼院書店京都支店長、リクルート社を経て独立。小説や古典文学やエンタメなど幅広い分野で、批評や解説を手がける。著書『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』(サンクチュアリ出版)『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書。新書大書2025受賞作)『娘が母を殺すには?』(PLANETS)等多数。 |












